イエナプラン教育とは

オランダ・イエナプラン教育の特徴・キーワード


1. リビングルームとしての教室
イエナプラン校では、教室をリビングルームとして捉える。教室は、毎年、新学年度が始まるたびに、その教室の担任であるグループ・リーダー(教員)と、クラスの子どもたちが共に話し合いながら、教室の内装を整えていく。教室には、異年齢の子どもたちが共に座る席やグループリーダーの事務机のほか、読書用のソファーが設けられたコーナーや情報検索用のコーナーがある。また、背後の壁や、廊下と教室の境部のガラス窓の部分にディスプレー用の空間を設け、子どもたちが学びながら自分たちの教室の環境を独自に整えていくことができるようにしている。さらに、共同で作業をする場として、教室の中心には作業テーブルがおかれることが多い。教室の中の机などの家具は、子どもたちが動かしやすい軽い材質を使い、グループリーダーと子どもたちが、いつでもサークル(車座)に座って話し合いができるようにしてある。

 <リビングルームとしての教室図>

ひとつの教室には3学年の生徒が一緒になり「根幹(ファミリー)グループ」を作る。
その中で、生徒はさらに、テーブルグループに分かれる。テーブルグループでも、
必ず、3学年の子供たちが一緒になって勉強する。 


2. マルチエイジの根幹グループ
イエナプラン校の学級編成は、マルチエイジグループが基本だ。通常、3つの年齢のグループ(4−6歳児グループ、6−9歳児グループ、9−12歳児グループ)から構成される。子どもたちは、3年間を同じ教室の同じグループリーダーの下で年少・年中・年長の三つの立場を経験しながらすごし、それを繰り返しながら小学校を卒業する。つまり、一人の子どもは、低学年グループの年少、年長を経て、中学年グループの、年少、年中、年長を経、再び、高学年グループの年少、年中、年長を経験する。こうすることによって、家族の兄弟関係に似た、年齢差による立場の違いを体験できる。これを、イエナプランでは、将来、社会に出たときに相手の立場を理解して行動するための準備、と考えている。また、こうすることによって、同年齢学年性に起こりがちな、できる子・できない子の固定化を防ぎ、子供の個性や真の意味のリーダーシップが生まれる、という利点も指摘する。

 <イエナプランのマルチエイジの学級編成図>


 <一年後>


3. サークル対話
イエナプラン教育における教室での学習活動では、サークル対話(車座になって話し合う)という形式が、繰り返し使われる。サークルには、特定のテーマを決めずに自由に話合う「オープン・サークル」、前もってグループリーダーや一定の子どもが話題を準備した「準備サークル」、グループリーダーが何かをみなに伝えるためのサークル、何かを一緒に見たりそれについて話し合ったりするサークル、観察サークル、報告サークル、自由作文の朗読サークル、テーマ学習サークルなどがある。
サークルには、グループリーダーも加わり、子どもたちの対話のファシリテーターの役割を果たす。



4. ワールドオリエンテーション
イエナプラン教育では、理科・社会科の区別はなく、ワールドオリエンテーションという総合学習の形態を用いる。ワールドオリエンテーションについての考え方、教材、教育方法、カリキュラムは、オランダで特に大きく発達した。
年間およそ8−9のテーマを決め、学校全体で同じテーマに取り組む。
テーマは、7つの『経験領域』と『時間』『空間』について、循環的に取り上げられる。
7つの経験領域とは

〆遒襪海箸隼箸Δ海函箆働、消費、持続可能性など)、
環境と地形(人の棲息、植物・動物の棲息、住まいとしての地球宇宙環境など)、
巡る1年(1年の中の月日、お祝いや催し、学校の1年など)、
さ蚕僉雰設、機械と道具、大きなシステム、原料とエネルギー、技術をどう使う、など)、
ゥ灰潺絅縫院璽轡腑鵝並召凌佑函⊆然と、また、自然の中で、他の国の人と、など)、
ΧΔ棒犬る(社会に帰属する、共に生きるために、共にひとつの世界を、など)、
Щ笋凌誉検併筺⊃諭后大人たちなど)

さらに、

■時間について:自然の中で時間を測る、時間を使う、時間について哲学する、循環する時間、線形に続く時間など
■空間について:空間を意識する、空間の価値を認めその使用について考える、空間を考慮した思考を発達させる、空間の計測の仕方、空間の表し方(図で、地図で、模型で)、空間と共同社会、空間と自然、空間と時間、空間について哲学するなど

これらの領域を循環して取り上げるが、学習テーマは、具体的なものをあげ、各年齢集団にふさわしい内容で取り組む。

たとえば、『地形と環境』で、動植物の棲息について取り上げた場合、その期間、低学年グループは、<冬の野鳥>を取り上げ、中学年グループは<冬木の枝>、高学年グループは、<冬眠動物>を取り上げる、といった具合だ。

ワールドオリエンテーションは、学校全体で一定期間同じテーマに取り組むことによって、理科・社会に限らず、国語、算数、などの基礎科目の中でもテーマを織り込むことができるし、音楽、演劇、地図の学び、コンピューター検索、英語学習などにもテーマを派生して行なうことができる。また、プレゼンテーションは、クラスの中だけではなく、他学年の子供たちを対象に行なうこともできる。
そうすることによって、学校生活の中に、子どもは意味を見出し、総合的な学習をすることができる。
基本的に、テーマである対象物に対する子どもの『問いかけ』を学習の出発点とし、自分たちがあげた問いを整理して、それに対する答え探しの手順を話し合い、計画して学習を進める、というプロセスに、グループリーダーはファシリテーターの役割を果たしながらかかわる。
サークルを作った話し合いを、クラス単位、小グループ単位で繰り返し、自分の観察だけではなく、他の子供の観察を通じても、知見を広げ、自他の違い、共同の仕方を学ぶ場を与えることも、ワールドオリエンテーションの重要な役割である。



5. 循環する活動・科目によらない時間割
イエナプラン校では、科目ごとの時間割は作らない。基本的に、(サークル)対話−遊び−仕事(学習)−催し(行事や祝い)という4つのパターンの活動を循環させる時間割を作る。
 いうまでもなく、『遊び』は、子どもが音楽に合わせて体を動かして感情を表現したり、演劇作りをするといったものから、教育学上の効果を期待したゲーム遊びなどのことである。『仕事(学習)』は、課題を意識してそれを達成するための活動で、個別に行なう自立学習と共同学習の形態がある。催しは、一般的な祝祭のほか、その学校の特別の行事、子どもやグループリーダーの誕生日、などのほか、毎週週末の最後の時間を1時間ほど利用して行なうミニ学芸会がある。ミニ学芸会は、クラスごとに巡回する形で、年間に、数回準備をすることになる。また、催しは、単に、祝い事や楽しみの共有だけではなく、悲しみを共有する場、としても捉えられる。喜怒哀楽を仲間と共有することで、『共に生きる』ことを具体的に体験させる場、として捉えられている。

 <循環するリズミカルな活動図>



6. 静かな学びの場
イエナプラン校では、子どもが『静かに』黙考する機会を十分に持つことを強調している。そのために、教室では、ブロックアワーといわれる自立学習の時間など、他の子どもの邪魔をせずに、静かに学ぶ環境を子どもと共に尊重する姿勢が貫かれる。それはまた、共同学習の場や、サークル対話の時間を織り込むことで、子どもが自発的に率直に発言しあうことのできる場の確保と表裏の関係にある。
静かな学びの場の尊重は、子どもたちが、何か分からないことについて、すぐに答えを出そうとしたり、グループリーダーや他の子どもに聞いて解決するのではなく、答えのない問いと付き合う訓練でもある。いくつもの答えのない問いを心に抱いて、あきらめずに答え探しを続ける態度が、探究心を養うと考えられる。)



7. ペダゴジカル・シチュエーション(教育学的環境)
教師が一方的に『教え』子どもが一方的に受身に『習う』という教育・学習形態を否定するイエナプランでは、教員や学校経営者の役割は、知識伝達ではなく、子どもが、自発的に学びたいという意欲を持つようになるための、専門的に考え抜かれた、環境づくり、ということが強調される。それは、教室をリビングルームとして、安心し、快適な場として整えることにも現れている。また、教室の中には、子どもの性格やテンポに合わせて、適合的にグループリーダーが選択できる多様な教材が常備されている。
絵や写真やデジタル化された情報ではなく、できるだけ、本物の自然や事物に触れる機会が用意される。そのために、校舎の作り方、校庭のデザインの仕方、学校菜園や動物飼育の場、校外での探索の機会、などが積極的に取り入れられる。
ただし、そうした刺激は、先のワールドオリエンテーションの経験領域などを考慮に入れ、体系的・計画的に企画されたものである、というクローズドなものと、偶発的に子どもの日常的な発見から生まれるオープンなものとがある、という考え方だ。両者を考慮することによって、子どもを考えも無しに自然や外界に放任するといった非教育的な環境を極力回避している。



8. 真正性(オーセンティシティ)
『真正性』は、人間のあり方についてと、学習の対象についていわれる。いずれも、『ホンモノ』という意味と解してよい。
これにより、教員は、何でも知っている、常に教え、導く存在ではなく、子どもたちの中に共に加わった一人の個性を持った人=グループリーダーとして捉えられる。グループリーダーは、子どもたちよりも経験が深いし、教員としての訓練を受けた専門家であると同時に、子どもたちと同じように、現在なお、人間として学び続ける存在ということだ。グループリーダーは、それぞれ、自分の個性を自覚し、自分を磨き続ける存在でなくてはならない。そのために、常に、時事に関心を持ち、新しい知識を求めて探求し、物事に好奇心をもって取り組む存在として、積極的に生きる姿を子どもに示していく存在であることを理想としている。
また、「真正性」は、学習対象についても指摘されることで、架空のイメージ、サンプル、模型といったものばかりでなく、できるだけ、本物に子どもが触れられるように学習環境を作ることが求められる。たとえば、時間や昼夜について学ぶ時には、棒を持って校庭に出、日光によって作られる棒の影を観察し記録すること、植物の形状について学ぶ時には、図鑑に描かれた写真や図だけではなく、実際に戸外に出て、本当の木や花を見ることからはじめるべきだ、という考え方だ。戸外に出てみてみれば、葉の落ちた冬樹であることもあるし、花が開かず蕾の時もある。しかし、その状態こそが、学びの出発点であり、そこから、子どもの学習の起点としての「問いかけ」が始まる。



9. 学校職員のチームワーク
イエナプランの学校活動は、クラス単位ではなく、学校単位で行なわれる機会も多い。クラスの授業は、学校全体の教育計画の枠組みの中で企画される。そのため、学校の職員は、年間計画、月間計画、週間計画などを、全員で話し合い、学校の企画として作り上げていく。
そのためのリーダーシップをとるのが、校長の役割である。この際、校長と他の教職員の関係は、クラスの中のグループリーダーと子どもたちの関係に相似していて、校長は、各教職員が、共同で話し合いをする際のファシリテーターの役割を果た巣ものである、という考え方をする。



10. 保護者との協力的な態度
イエナプラン教育では、子どもの教育は、学校と保護者との協力関係に基づいて行なうもの、という考え方がある。したがって、保護者に対しては、常に、学校での状況をオープンに伝え、保護者の質問に対して率直に答える態度を重視する。また、教育活動の中に、保護者が参加することを勧める。
たとえば、ワールドオリエンテーションのテーマが変わるごとに行なわれる学校の校舎内の飾りつけ、学年のはじめに行なわれる教室内の内装改装(ペンキ塗りや調度品設置など)、パン作りのデモンストレーション、遠足の際の援助、個別指導の補助、小グループでの読みの練習の援助、など、頻繁に保護者が学校活動に参加できるようにしている。


ここに挙げた内容は、ペーターセンの「小さなイエナプラン」のほか、主として以下の参考文献と学校視察の経験を元にまとめたものです。今後、これらの文献の日本語訳刊行の可能性を検討していく予定です。(文責・リヒテルズ直子 随時更新)

*本ページのテキスト・図はリヒテルズ直子氏がまとめたものです。無断転記を禁じます。

1)「ローズガーデン」(De Rozentuin, een beeld van een Jenaplanschool, NJPV) 
架空のイエナプラン工を、理想の姿として描き、実践者に指針を与えるためのもの。
2)「20の原則」(Basisprincipes Jenaplan, NJPV)
20項目の原則について、実践現場の例を挙げながら詳しく解説したもの。
3)「ヤンセンの自転車」(Wereldorientatie,,,met de fiets van Jansen, JAS)
ワールドオリエンテーションの進め方の手引書
4)「21世紀に向かうイエナプラン教育」(Jenaplanonderwijs op weg naar de 21e eeuw)
イエナプランの教員向けの教科書

 

イエナプラン教育の起こり

 
イエナプラン教育の発祥
イエナプラン教育のコンセプトは、もともとドイツのペーター・ペーターセン(ドイツ語ではペーターゼン)(1884−1952)が、イエナ大学の実験校で取り組んでいた教育実践を元に発表したのが起こり。
「イエナプラン教育」という名称は、1926年に、スイスのロカルノで開催された新教育フェローシップ(NEF)の第4回国際会議で、イエナ大学での教育実践についてペーターセンが発表した折に、NEFの秘書をしていたクレア・ソパードとドロシー・マシューズとが名づけたことに由来する。ここでの報告を元に同年刊行されたペーターセンの本が「小さなイエナプラン(Der Kleine Jena-Plan)」という書名で発行され、イエナプラン教育関係者のバイブルのようになっている。


オランダ・イエナプラン教育の起こりと発達
1950年代に、新教育フェローシップのオランダ支部に当たる養育・教育刷新研究会(WVO)という会の書記をしていたスース・フロイデンタール(数学者ハンス・フロイデンタールの夫人)が、52年ごろに「小さなイエナプラン」に出会い、以後、献身的にオランダでのイエナプラン教育の普及に尽くした。1960年にオランダで初めてのイエナプラン校が設立される。以後、民主化や子どもの個性の尊重に力点を置いたオランダの教育改革の潮流に乗り、また、これを牽引・推進する力となって、急速に学校数が増加していった。現在、オランダ全国に、公立校・私立校をあわせ、220校以上のイエナプラン小学校があり、発祥地ドイツでの発展をはるかに凌ぐ発展を遂げている。
オランダのイエナプラン教育は、初期には財団を、また、後には参加校の会費で賄われる協会組織を作り、教材開発や研究を重ね、現在では、国内の10数校の教員養成大学で新規教員養成のイエナプランコースを設けて認定修了書を出しているほか、現職教員のための研修事業・コーチング事業などにも取り組んでいる。
オランダ・イエナプラン教育には、その教材開発の過程で、アメリカ合衆国の無学年制学校や、フレネ教育、英米で発達したプライマリー・サイエンスの考え方なども積極的に取り入れている。

 

イエナプランって何?

イエナプランって何?
以下の記事は「オランダイエナプラン教育協会(NJPV)のホームページでオランダの人々、特に保護者のために、書かれているものを翻訳したものです。日本のイエナプラン教育協会も、これから、独自のアイデアを発展させていくことと思いますが、まだ、イエナプラン教育をよく知らない皆さんにとっても、また、これから日本のイエナプラン教育に貢献していこうと思っている皆さんにとっても、大変役に立つ情報だと思います。NJPVの許可を得て転載します。
(リヒテルズ直子:訳者)


イエナプランの歴史
イエナプランは1923年にイエナ大学の教育学教授だったペーター・ペーターゼン教授によって始められました。1924年に子どもたちが根幹グループと呼ばれる異年齢のグループで教育を受けるという小さな試みが始められたのがきっかけでした。この試みはそれから徐々に、6歳から15歳までの学校、幼稚園、特殊教育へと広がっていきました。この学校では教育実践を通して教育学的な研究が進められていたということが重要な点です。研究はペーターゼンの奥さんだったエルゼによっても行われました。
第2次世界大戦ののち、ペーターゼンは自らの経験や理解をもとに4歳から18歳までの子どもたちの教育を再編成していきました。ペーターゼンの教育学上のもっとも大きな仕事は「教授法から教育学へ」というものです。ナチスの支配期にペーターゼンと彼の学校とは大きな圧力のもとに置かれましたが、学校は閉じられることなく存在することができました。このことはペーターゼンの人となり、また彼のものの考え方に対する批判的な論評を呼ぶことにもなりました。ペーターゼンは戦後、ひとびとがナチス思想からの距離を置くように努力した時期を生き延びていますが、オランダにおけるイエナプラン運動はペーターゼンのイエナプランにおけるこのような弱点に対する批判を真剣に受け止め、独自の原則を立て、批判的にものを考える力を養うことに特に配慮しています。
戦後、イエナがソビエト連合支配下の共産圏に置かれた時、ペーターゼンは共産主義政府当局との間で対立し、1949年には学校は閉校になっています。そしてペーターゼンは西ドイツに亡命し1953年にそこで亡くなりました。
1950年代と60年代に西ドイツではいくつかのイエナプラン校が設置されていますが、1960年代における教育の拡大に伴い、これらの学校のうちのいくつかは消滅してしまいました。


オランダにおけるイエナプラン
我が国(オランダ)では、スース・フロイデンタール・ルター(Suus Freudenthal- Lutter) (1908-1986)が1955年にペーターゼンのイエナプランを発見しています。彼女はケース・ブケ(Kees Boeke)が代表を務めていた「養育・教育刷新研究会(de Werkgemeenschap voor Vernieuwing van Opvoeding en Onderwijs)で国際交流の秘書として活躍していました。母親として彼女は自分の子どもたちが受けている教育に失望していました。彼女はペーターゼンのイエナプランの中に、彼女がもう何年もの間求めていた学校の姿を見出したのです。スース・フロイデンタールというこの女性は、持ち前の思考力、エネルギー、そして、組織力とによってオランダにおけるイエナプラン運動の母と呼ばれるにふさわしい女性でした。1968年、イエナプラン財団が設立されています。同時に、ペドモルフォーゼ(訳者注:教育の根本再編、というような意味合い)という機関誌も発行されるようになりました。(この機関誌は1981年に廃刊となりそれから数年後にメンセン・キンデレン(訳者注:人間・子どもたちの意)という現在の機関誌が刊行されるようになりました) 我が国(オランダ)で最初にできたイエナプラン・スクールは1962年に設置されています。その後、学校数は早い勢いで増加していきました。


イエナプランスクール
我が国(オランダ)には現在220校以上のイエナプランスクールがあります。これらの学校はオランダイエナプラン協会(Nederlandse Jenaplanvereniging (NJPV))に属しており生徒数はおよそ4万5千人に及びます。イエナプランスクールと名乗っている学校はNJPVのメンバーであると共に、イエナプランの20の原則を共同声明している学校とみなされます。
またイエナプランスクールはモンテッソーリ校、フリー・スクール(訳者注:シュタイナー校)、ダルトン校、フレイネ校その他の学校と共にオールタナティブ教育共同組織(Samenwerkende Organisaties voor Vernieuwings-onderwijs (SOVO))に参加しています。オールタナティブ(訳者注:刷新的・改革的)な方向でのこういう共同は、ペタゴジカルな(教育学的な)学校という名前のもとで、ますます強まってくる傾向にあります。

国際的には、、、
イエナプランは諸外国とのコンタクトも頻繁に持っています。ドイツやベルギー、チェコ共和国、ハンガリー、ロシア、ルーマニアなど東欧、中欧の国々、にはイエナプラン校が存在しますし、オーストリア、ベルギーのフランス語圏などでも新しい動きが生まれつつあります。また、イギリスやアメリカ合衆国にある非常に類似性の高い学校ともコンタクトがあります。


教員養成・教員研修・サポート等
1974年より、いくつかの教員養成大学(PABO)の中の専門コースとしてイエナプラン教育のための教員養成コースが作られています。1981年以後、現職教員のための研修が行われています。1986年には教員資格に対する追加的な証明書として教育文化科学省が認定したイエナプラン・ディプロマ(教員養成大学または現職研修として取得できるもの)が発行されるようになっています。1974年にはCPS(訳者注:キリスト教教育財団と呼ばれるプロテスタント系の学校の全国組織)に「全国教育学センター(Landelijke Pedagogische Centra)」が設置され、そこに、イエナプラン教育の全国代表の専属研究員が置かれるようになりました。この研究員によって、研修やサポートが行われ、イエナプランを専門とする学校サポートサービスのネットワークが作られていったのです。その後(1990年から)全国の教員や学校をサポートするためにイエナプランサポート財団(Stichting Jenaplan Ondersteuning (SJPO))が設置され、これはその後、フレイネ・スクールやモンテッソーリスクールとも協働する全国オールタナティブ教育ビューロー(LBVO)に組織併合されました。
同一地域にあるイエナプラン校が協働する「学校地区」はオランダイエナプラン協会(NJPV)の基盤を成しており、全国理事会という共同サークルに代表を送っています。協会の活動をコーディネートする役割として、週に何日か有給で協会の仕事に携わるリーダーが置かれています。ヤープ・メイヤーが現在そのリーダーの立場にあります。1999年より、オランダイエナプラン協会(NJPV)には、研究専門職がおかれ、ケース・ボットがその任に当たっています。これは、CPSから移譲されたものです。
(訳者注:上の段落に表記された状況は数年前のもので、現在ケースボットは辞任、協会には、代表、秘書、会計が置かれ、研究事業・研修やサポートの事業は、いくつかの民営化されたイエナプラン研修団体が担当する形に変わってきている。)


内容面での刷新
新しく小学校を設立する場合、伝統的なオールタナティブスクール(訳者注:オランダでは、イエナプラン、モンテッソーリ、シュタイナー、フレイネ、ダルトンなどを指す)が極めて重要な役割を果たしています。もっとも最近の中核目標(訳者注:オランダの教育文化科学省が定めた小学校修了段階で到達されていることが望ましいとされる目標)などのような教育法規の内容の中にも、そういう傾向をたどることができます。この10年余りの間、イエナプラン校はワールドオリエンテーションや、言語教育の授業目標、算数・数学教育のビジョン、また、多様な分野にわたる学際的なプログラムなど、新しいカリキュラムの開発を通して、自身の教育の内容面での刷新に多くのエネルギーを費やしてきました。
読み方、学校における根幹グループの構成の仕方、などに関する研究も行われてきましたし、現在も行われています。最近では、イエナプランの小学校教育のコンセプトが再編され、イエナプランに基づいた中等教育についてのビジョンも開発されてきています。機関誌「メンセン・キンデレン」(Mensen-kinderen)では、こういう研究や開発についてのニュースが広報され、コメントや助言が加えられたり、学校における現場実践を伝えたりしているほか、会合、研修、オランダイエナプラン教育協会の方針などについて、読者に情報が伝えられています。


イエナプランとは何か
イエナプラン校とは子どもたち、教員たち、そして保護者たちを内包する一つの共同体です。教員たちはそこでは専門家としての養育者です。保護者たちというのは学校における子どもたちの養育の一部を共に担うもので、さまざまなレベルにおいて子どもたちの教育の中で重要な役割を果たします。保護者たちの共同なくしては学校はほとんど存在できないと言っても良いほどです。ですから、教員たちは、保護者が自分で意識してこの学校を選んだのだ、ということの上にたって仕事をします。学校における教育は子どもたちの養育を目指すものであり、それだけに、単に、読み書き算など、学校で教えられる知識を学ぶところというだけのものではないのです。イエナプランスクールで子どもたちはたくさんのことを学びます。子どもたちは、いわゆる基本の活動と呼ばれている、会話・遊び・仕事・催しという4つの活動に参加することで、学んでいきます。イエナプランスクールは子どもたちというものがお互いに大変異なる存在であるということを出発点にしています。そういう違いは、厄介なものであるとはとらえられません。子どもたちは、お互いにとても異なっているからこそ、お互いからたくさんのことを学ぶことができるのです。そういう理由から、子どもたちは、ちょうど、ある家族などがそうであるように、年齢の異なる子どもたちから成っている根幹グループに置かれるのです。どの根幹グループも、グループの空間、つまり、とても家庭的な環境を持ち、それは、子どもたちと一緒に作られ維持されていくものです。こうして、子どもたちは、空間に対して、自分たちの空間であるという責任を学んでいくのです。


違いと共に生きることを学ぶ
人というものはお互いに異なっていますが、だからこそよいのです。違っていればお互いから学ぶことができるのですから。年齢や人生の経験の異なる人、異なる民族や文化、男と女、いろいろな宗教などの倫理観の違いなどなどから私たちは互いに学ぶことができます。イエナプランスクールでは、性格、背景、能力においてとても大きな違いのある子どもたちがやってきます。そういう違いを無視するというのは不当なことでしょう。それは、平均とは異なる能力を持っているすべての子どもを犠牲にすることですし、力の足りない子どもたちは特別の援助を受けたり守られたりする権利を持っているはずです。ゆっくりとしたテンポで発達する子どももいれば、同じ年齢の子どもたちよりもたくさんのことができる子どももいるでしょう。子どもたちはイエナプランスクールではお互いの違いに対してどう関わるかということを正しく平和な方法で教えられます。他の子どもに対する尊敬、生命に対する尊重の念は、イエナプランスクールの中で大切な価値を持っています。根幹グループを作ることによって、子どもたちの位置づけは毎年変化します。年少の子は年中へ、年中の子は年長へ、という風に。それを通して子どもたちは重要な社会経験をするのです。そういう意味では、家族の中にいることよりももっと多くを学ぶことができます。この複雑な学習のプロセスで、グループリーダー(根幹グループの担任)は子どもたちを援助します。


ワールドオリエンテーション
イエナプランスクールではワールドオリエンテーションが重要な学習領域を成しています。子どもたちはワールドオリエンテーションの授業の中で彼らの周りにある自然、近くにいる人々、遠くにあるもの、生命や世界が持っている意味への問いかけなどとどう関わっていけばよいのかを学ぶのです。こういう学びを子どもたちはしばしば学校の外へ出て、あるいは逆に学校の中の世界を通して学びます。ヒトやモノ、お話を聞きながら、自分で観察したり実験をしながら、自分自身で問いかけながら、自分で図書館や資料センターに行って答えを探しながら、そして、知識や経験を持っている人に尋ねに行く、などして学ぶのです。簡潔に言うなら、子どもたちは、プロジェクトの形式で、発見したり探究することに忙しくしています。そうすることによって子どもたちの世界はもっと大きく広くなり、子ども自身が、自分の意見をもつようになるのです。どのイエナプランのカリキュラムも、全体として、法律が要求しているものに十分に答えるように作られています。法律の要求は、いわゆる、中核目標の中に書かれているものです。ですから、イエナプラン校に子どもを通わせると十分に学んでこないのではないか、と心配する必要はありません。保護者はこれについて、今でも時々、こういう異なる形式での教え方のために問題が起きるのではないか、と心配して、質問をされますが。イエナプランスクールでの学びは、子どもが安心感を感じるような雰囲気の中で行われます。子どもは挑戦的な、しかし、十分にできるはずの課題を与えられ、自分自身でも学びをより一層豊かにするための十分な自由が与えられますが、それと同時に、子どもには、自分で責任を持たずに『誰かがやるのに付き合っていればいい』というようなチャンスは与えられません。


学ぶというのは大切なこと
私たちはいったいどうしたら自分が知りたい何かについての情報にアクセスできるのでしょうか?どうやってそれをみな覚えておくのでしょうか?それをどうすればグループの仲間が興味深く感じるように伝えられるのでしょうか?
情報というものはしばしば読んで得られるものです。また情報は、その大切なポイントを書くことができればよく覚えることができます。他の人に対して、口頭で、または書面で報告することができます。何かグラフなどを使って結論を引き出すためには、その関係性をうまく説明できなくてはなりません。イエナプランスクールでは、だから、読んだり、書いたり、計算したりすることを学ぶ必要があるのです。こういう種類のことを目的を持って学ぶことができるためには、あるグループの子どもたちに対して、同じ教材を使って授業(インストラクション)が行われることもあります。それは、根幹グループの中で行われることもあれば、学校全体の子どもたちを進度に分けて行うこともあります。どういうやり方をするかはその学校の規模によります。子どもたちは、それぞれベストを尽くすことができるように励まされます。点数評価はイエナプランスクールではやりません。イエナプランスクールでは別の、もっと子どもの全体的な発達にふさわしい通知表の形式が使われます。何度も繰り返し行われた調査研究によってイエナプランスクールの子どもたちの、読み書き算の分野での測定可能な成績は、他の学校の子どもたちと変わらないということが明らかになっています。イエナプランスクールではほかの学校よりもずっとたくさんのことが行われることを考えてみると、これは注目すべきことです。もちろん中等教育でもイエナプランスクールに行くことができれば、子どもたちにとっても保護者にとっても素晴らしいことなのですが、残念ながら多くの地域ではまだそれは可能ではありません。


会話、遊び、仕事、催し
私たちは人々が生きたり学んだりする活動として4つの活動があると考えます。私たちは、ペンと紙と頭だけを忙しく使って学んでいるわけではないのです。
お互いに会話ができるようになれば、私たちはお互いに情報を伝え合ったり互いを理解し合ったりすることができるようになります。サークルを使った会話の時間に、計画が立てられ、仕事の内容が部分的に約束されます。一緒に遊ぶことで私たちは、お互いにお互いを必要とすることを学びます。また、遊びながら、私たちは、自分自身の何かに気づいたりします。仕事の中には、グループリーダーなどから学ぶインストラクションの時間やブロックアワーが含まれます。ブロックアワーというのは子どもたちが自分一人で自立して仕事に取り組む時間です。例えば、週のオ―プニングだとか、週の終わりの時間、などに共に何かを催すことによって、私たちは、お互いに、頭と心を使ってお互いを知り合います。私たちはお互いの感情を交換し合うのです。これらの4つの活動は交互に行われます。こういう活動を交互に盛り込んだものがリズミックな週計画(時間割)と呼ばれるものです。


なにもかも、みんなお互いに違っている
たとえあるグループの仲間であると言っても、すべての人が皆それぞれ異なるように、イエナプランスクールもすべて一つ一つが異なっています。都市の学校は地方の学校とは違うでしょう。教職員チームはそれぞれ長所や短所を持っているでしょう。でも、すべてのイエナプランスクールはイエナプランの20の原則でつながっています。
オランダには220校以上の学校がオランダイエナプラン協会に属しており、その中には、公立のイエナプランスクールもあれば、プロテスタント、カトリック、非宗教などの私立のイエナプランスクールもあります。
イエナプランの基本はもちろんオランダイエナプラン協会が『発見』したものではありません。イエナプランのコンセプトはすでに1920年から1950年の間にペーター・ペーターゼンによってイエナに在った大学の実験校で考案されていました。そして、このコンセプトは、<ここの><今の>教育が置かれている状況に合わせるために、たゆみなく修正刷新されてきているものです。

出典:www.jenaplan.nl
(翻訳:リヒテルズ直子)

 

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