イエナプラン教育とは

イエナプランって何?

イエナプランって何?
以下の記事は「オランダイエナプラン教育協会(NJPV)のホームページでオランダの人々、特に保護者のために、書かれているものを翻訳したものです。日本のイエナプラン教育協会も、これから、独自のアイデアを発展させていくことと思いますが、まだ、イエナプラン教育をよく知らない皆さんにとっても、また、これから日本のイエナプラン教育に貢献していこうと思っている皆さんにとっても、大変役に立つ情報だと思います。NJPVの許可を得て転載します。
(リヒテルズ直子:訳者)


イエナプランの歴史
イエナプランは1923年にイエナ大学の教育学教授だったペーター・ペーターゼン教授によって始められました。1924年に子どもたちが根幹グループと呼ばれる異年齢のグループで教育を受けるという小さな試みが始められたのがきっかけでした。この試みはそれから徐々に、6歳から15歳までの学校、幼稚園、特殊教育へと広がっていきました。この学校では教育実践を通して教育学的な研究が進められていたということが重要な点です。研究はペーターゼンの奥さんだったエルゼによっても行われました。
第2次世界大戦ののち、ペーターゼンは自らの経験や理解をもとに4歳から18歳までの子どもたちの教育を再編成していきました。ペーターゼンの教育学上のもっとも大きな仕事は「教授法から教育学へ」というものです。ナチスの支配期にペーターゼンと彼の学校とは大きな圧力のもとに置かれましたが、学校は閉じられることなく存在することができました。このことはペーターゼンの人となり、また彼のものの考え方に対する批判的な論評を呼ぶことにもなりました。ペーターゼンは戦後、ひとびとがナチス思想からの距離を置くように努力した時期を生き延びていますが、オランダにおけるイエナプラン運動はペーターゼンのイエナプランにおけるこのような弱点に対する批判を真剣に受け止め、独自の原則を立て、批判的にものを考える力を養うことに特に配慮しています。
戦後、イエナがソビエト連合支配下の共産圏に置かれた時、ペーターゼンは共産主義政府当局との間で対立し、1949年には学校は閉校になっています。そしてペーターゼンは西ドイツに亡命し1953年にそこで亡くなりました。
1950年代と60年代に西ドイツではいくつかのイエナプラン校が設置されていますが、1960年代における教育の拡大に伴い、これらの学校のうちのいくつかは消滅してしまいました。


オランダにおけるイエナプラン
我が国(オランダ)では、スース・フロイデンタール・ルター(Suus Freudenthal- Lutter) (1908-1986)が1955年にペーターゼンのイエナプランを発見しています。彼女はケース・ブケ(Kees Boeke)が代表を務めていた「養育・教育刷新研究会(de Werkgemeenschap voor Vernieuwing van Opvoeding en Onderwijs)で国際交流の秘書として活躍していました。母親として彼女は自分の子どもたちが受けている教育に失望していました。彼女はペーターゼンのイエナプランの中に、彼女がもう何年もの間求めていた学校の姿を見出したのです。スース・フロイデンタールというこの女性は、持ち前の思考力、エネルギー、そして、組織力とによってオランダにおけるイエナプラン運動の母と呼ばれるにふさわしい女性でした。1968年、イエナプラン財団が設立されています。同時に、ペドモルフォーゼ(訳者注:教育の根本再編、というような意味合い)という機関誌も発行されるようになりました。(この機関誌は1981年に廃刊となりそれから数年後にメンセン・キンデレン(訳者注:人間・子どもたちの意)という現在の機関誌が刊行されるようになりました) 我が国(オランダ)で最初にできたイエナプラン・スクールは1962年に設置されています。その後、学校数は早い勢いで増加していきました。


イエナプランスクール
我が国(オランダ)には現在220校以上のイエナプランスクールがあります。これらの学校はオランダイエナプラン協会(Nederlandse Jenaplanvereniging (NJPV))に属しており生徒数はおよそ4万5千人に及びます。イエナプランスクールと名乗っている学校はNJPVのメンバーであると共に、イエナプランの20の原則を共同声明している学校とみなされます。
またイエナプランスクールはモンテッソーリ校、フリー・スクール(訳者注:シュタイナー校)、ダルトン校、フレイネ校その他の学校と共にオールタナティブ教育共同組織(Samenwerkende Organisaties voor Vernieuwings-onderwijs (SOVO))に参加しています。オールタナティブ(訳者注:刷新的・改革的)な方向でのこういう共同は、ペタゴジカルな(教育学的な)学校という名前のもとで、ますます強まってくる傾向にあります。

国際的には、、、
イエナプランは諸外国とのコンタクトも頻繁に持っています。ドイツやベルギー、チェコ共和国、ハンガリー、ロシア、ルーマニアなど東欧、中欧の国々、にはイエナプラン校が存在しますし、オーストリア、ベルギーのフランス語圏などでも新しい動きが生まれつつあります。また、イギリスやアメリカ合衆国にある非常に類似性の高い学校ともコンタクトがあります。


教員養成・教員研修・サポート等
1974年より、いくつかの教員養成大学(PABO)の中の専門コースとしてイエナプラン教育のための教員養成コースが作られています。1981年以後、現職教員のための研修が行われています。1986年には教員資格に対する追加的な証明書として教育文化科学省が認定したイエナプラン・ディプロマ(教員養成大学または現職研修として取得できるもの)が発行されるようになっています。1974年にはCPS(訳者注:キリスト教教育財団と呼ばれるプロテスタント系の学校の全国組織)に「全国教育学センター(Landelijke Pedagogische Centra)」が設置され、そこに、イエナプラン教育の全国代表の専属研究員が置かれるようになりました。この研究員によって、研修やサポートが行われ、イエナプランを専門とする学校サポートサービスのネットワークが作られていったのです。その後(1990年から)全国の教員や学校をサポートするためにイエナプランサポート財団(Stichting Jenaplan Ondersteuning (SJPO))が設置され、これはその後、フレイネ・スクールやモンテッソーリスクールとも協働する全国オールタナティブ教育ビューロー(LBVO)に組織併合されました。
同一地域にあるイエナプラン校が協働する「学校地区」はオランダイエナプラン協会(NJPV)の基盤を成しており、全国理事会という共同サークルに代表を送っています。協会の活動をコーディネートする役割として、週に何日か有給で協会の仕事に携わるリーダーが置かれています。ヤープ・メイヤーが現在そのリーダーの立場にあります。1999年より、オランダイエナプラン協会(NJPV)には、研究専門職がおかれ、ケース・ボットがその任に当たっています。これは、CPSから移譲されたものです。
(訳者注:上の段落に表記された状況は数年前のもので、現在ケースボットは辞任、協会には、代表、秘書、会計が置かれ、研究事業・研修やサポートの事業は、いくつかの民営化されたイエナプラン研修団体が担当する形に変わってきている。)


内容面での刷新
新しく小学校を設立する場合、伝統的なオールタナティブスクール(訳者注:オランダでは、イエナプラン、モンテッソーリ、シュタイナー、フレイネ、ダルトンなどを指す)が極めて重要な役割を果たしています。もっとも最近の中核目標(訳者注:オランダの教育文化科学省が定めた小学校修了段階で到達されていることが望ましいとされる目標)などのような教育法規の内容の中にも、そういう傾向をたどることができます。この10年余りの間、イエナプラン校はワールドオリエンテーションや、言語教育の授業目標、算数・数学教育のビジョン、また、多様な分野にわたる学際的なプログラムなど、新しいカリキュラムの開発を通して、自身の教育の内容面での刷新に多くのエネルギーを費やしてきました。
読み方、学校における根幹グループの構成の仕方、などに関する研究も行われてきましたし、現在も行われています。最近では、イエナプランの小学校教育のコンセプトが再編され、イエナプランに基づいた中等教育についてのビジョンも開発されてきています。機関誌「メンセン・キンデレン」(Mensen-kinderen)では、こういう研究や開発についてのニュースが広報され、コメントや助言が加えられたり、学校における現場実践を伝えたりしているほか、会合、研修、オランダイエナプラン教育協会の方針などについて、読者に情報が伝えられています。


イエナプランとは何か
イエナプラン校とは子どもたち、教員たち、そして保護者たちを内包する一つの共同体です。教員たちはそこでは専門家としての養育者です。保護者たちというのは学校における子どもたちの養育の一部を共に担うもので、さまざまなレベルにおいて子どもたちの教育の中で重要な役割を果たします。保護者たちの共同なくしては学校はほとんど存在できないと言っても良いほどです。ですから、教員たちは、保護者が自分で意識してこの学校を選んだのだ、ということの上にたって仕事をします。学校における教育は子どもたちの養育を目指すものであり、それだけに、単に、読み書き算など、学校で教えられる知識を学ぶところというだけのものではないのです。イエナプランスクールで子どもたちはたくさんのことを学びます。子どもたちは、いわゆる基本の活動と呼ばれている、会話・遊び・仕事・催しという4つの活動に参加することで、学んでいきます。イエナプランスクールは子どもたちというものがお互いに大変異なる存在であるということを出発点にしています。そういう違いは、厄介なものであるとはとらえられません。子どもたちは、お互いにとても異なっているからこそ、お互いからたくさんのことを学ぶことができるのです。そういう理由から、子どもたちは、ちょうど、ある家族などがそうであるように、年齢の異なる子どもたちから成っている根幹グループに置かれるのです。どの根幹グループも、グループの空間、つまり、とても家庭的な環境を持ち、それは、子どもたちと一緒に作られ維持されていくものです。こうして、子どもたちは、空間に対して、自分たちの空間であるという責任を学んでいくのです。


違いと共に生きることを学ぶ
人というものはお互いに異なっていますが、だからこそよいのです。違っていればお互いから学ぶことができるのですから。年齢や人生の経験の異なる人、異なる民族や文化、男と女、いろいろな宗教などの倫理観の違いなどなどから私たちは互いに学ぶことができます。イエナプランスクールでは、性格、背景、能力においてとても大きな違いのある子どもたちがやってきます。そういう違いを無視するというのは不当なことでしょう。それは、平均とは異なる能力を持っているすべての子どもを犠牲にすることですし、力の足りない子どもたちは特別の援助を受けたり守られたりする権利を持っているはずです。ゆっくりとしたテンポで発達する子どももいれば、同じ年齢の子どもたちよりもたくさんのことができる子どももいるでしょう。子どもたちはイエナプランスクールではお互いの違いに対してどう関わるかということを正しく平和な方法で教えられます。他の子どもに対する尊敬、生命に対する尊重の念は、イエナプランスクールの中で大切な価値を持っています。根幹グループを作ることによって、子どもたちの位置づけは毎年変化します。年少の子は年中へ、年中の子は年長へ、という風に。それを通して子どもたちは重要な社会経験をするのです。そういう意味では、家族の中にいることよりももっと多くを学ぶことができます。この複雑な学習のプロセスで、グループリーダー(根幹グループの担任)は子どもたちを援助します。


ワールドオリエンテーション
イエナプランスクールではワールドオリエンテーションが重要な学習領域を成しています。子どもたちはワールドオリエンテーションの授業の中で彼らの周りにある自然、近くにいる人々、遠くにあるもの、生命や世界が持っている意味への問いかけなどとどう関わっていけばよいのかを学ぶのです。こういう学びを子どもたちはしばしば学校の外へ出て、あるいは逆に学校の中の世界を通して学びます。ヒトやモノ、お話を聞きながら、自分で観察したり実験をしながら、自分自身で問いかけながら、自分で図書館や資料センターに行って答えを探しながら、そして、知識や経験を持っている人に尋ねに行く、などして学ぶのです。簡潔に言うなら、子どもたちは、プロジェクトの形式で、発見したり探究することに忙しくしています。そうすることによって子どもたちの世界はもっと大きく広くなり、子ども自身が、自分の意見をもつようになるのです。どのイエナプランのカリキュラムも、全体として、法律が要求しているものに十分に答えるように作られています。法律の要求は、いわゆる、中核目標の中に書かれているものです。ですから、イエナプラン校に子どもを通わせると十分に学んでこないのではないか、と心配する必要はありません。保護者はこれについて、今でも時々、こういう異なる形式での教え方のために問題が起きるのではないか、と心配して、質問をされますが。イエナプランスクールでの学びは、子どもが安心感を感じるような雰囲気の中で行われます。子どもは挑戦的な、しかし、十分にできるはずの課題を与えられ、自分自身でも学びをより一層豊かにするための十分な自由が与えられますが、それと同時に、子どもには、自分で責任を持たずに『誰かがやるのに付き合っていればいい』というようなチャンスは与えられません。


学ぶというのは大切なこと
私たちはいったいどうしたら自分が知りたい何かについての情報にアクセスできるのでしょうか?どうやってそれをみな覚えておくのでしょうか?それをどうすればグループの仲間が興味深く感じるように伝えられるのでしょうか?
情報というものはしばしば読んで得られるものです。また情報は、その大切なポイントを書くことができればよく覚えることができます。他の人に対して、口頭で、または書面で報告することができます。何かグラフなどを使って結論を引き出すためには、その関係性をうまく説明できなくてはなりません。イエナプランスクールでは、だから、読んだり、書いたり、計算したりすることを学ぶ必要があるのです。こういう種類のことを目的を持って学ぶことができるためには、あるグループの子どもたちに対して、同じ教材を使って授業(インストラクション)が行われることもあります。それは、根幹グループの中で行われることもあれば、学校全体の子どもたちを進度に分けて行うこともあります。どういうやり方をするかはその学校の規模によります。子どもたちは、それぞれベストを尽くすことができるように励まされます。点数評価はイエナプランスクールではやりません。イエナプランスクールでは別の、もっと子どもの全体的な発達にふさわしい通知表の形式が使われます。何度も繰り返し行われた調査研究によってイエナプランスクールの子どもたちの、読み書き算の分野での測定可能な成績は、他の学校の子どもたちと変わらないということが明らかになっています。イエナプランスクールではほかの学校よりもずっとたくさんのことが行われることを考えてみると、これは注目すべきことです。もちろん中等教育でもイエナプランスクールに行くことができれば、子どもたちにとっても保護者にとっても素晴らしいことなのですが、残念ながら多くの地域ではまだそれは可能ではありません。


会話、遊び、仕事、催し
私たちは人々が生きたり学んだりする活動として4つの活動があると考えます。私たちは、ペンと紙と頭だけを忙しく使って学んでいるわけではないのです。
お互いに会話ができるようになれば、私たちはお互いに情報を伝え合ったり互いを理解し合ったりすることができるようになります。サークルを使った会話の時間に、計画が立てられ、仕事の内容が部分的に約束されます。一緒に遊ぶことで私たちは、お互いにお互いを必要とすることを学びます。また、遊びながら、私たちは、自分自身の何かに気づいたりします。仕事の中には、グループリーダーなどから学ぶインストラクションの時間やブロックアワーが含まれます。ブロックアワーというのは子どもたちが自分一人で自立して仕事に取り組む時間です。例えば、週のオ―プニングだとか、週の終わりの時間、などに共に何かを催すことによって、私たちは、お互いに、頭と心を使ってお互いを知り合います。私たちはお互いの感情を交換し合うのです。これらの4つの活動は交互に行われます。こういう活動を交互に盛り込んだものがリズミックな週計画(時間割)と呼ばれるものです。


なにもかも、みんなお互いに違っている
たとえあるグループの仲間であると言っても、すべての人が皆それぞれ異なるように、イエナプランスクールもすべて一つ一つが異なっています。都市の学校は地方の学校とは違うでしょう。教職員チームはそれぞれ長所や短所を持っているでしょう。でも、すべてのイエナプランスクールはイエナプランの20の原則でつながっています。
オランダには220校以上の学校がオランダイエナプラン協会に属しており、その中には、公立のイエナプランスクールもあれば、プロテスタント、カトリック、非宗教などの私立のイエナプランスクールもあります。
イエナプランの基本はもちろんオランダイエナプラン協会が『発見』したものではありません。イエナプランのコンセプトはすでに1920年から1950年の間にペーター・ペーターゼンによってイエナに在った大学の実験校で考案されていました。そして、このコンセプトは、<ここの><今の>教育が置かれている状況に合わせるために、たゆみなく修正刷新されてきているものです。

出典:www.jenaplan.nl
(翻訳:リヒテルズ直子)

 

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